人間を疲労させる要因を探る

「人は,一つの動作しかしないと疲労する。心理的
な退屈以前の問題として,生理的な疲労が出る。乳
酸がたまり視力が落ちる。反応が遅くなりムラが
出る。」
マネジメント上P234

「自らのものではないスピード,リズム,持続力を
強要されるほど,人を疲れさせ,抗わせ ,いらつか
せるものはない。人はみな,それらのことに耐えら
れない。」
マネジメント上P235

人間の特性をよくあらわしていると思います。
ところが,人間の特性をいかしていない仕事がま
かり通ることがあります。

いわゆるブラック企業は,「自らのものではないス
ピード,リズム,持続力を強要」しているように思
います。

ブラック企業のような仕事の仕方は,今に始まっ
たことではありません。

人間が集団で仕事をするようになった太古の昔か
ら続いている仕事の仕方といえます。

人類の歴史で,人権的な問題はさておき奴隷の存
在は切っても切れない関係にありました。

奴隷は,「自らのものではないスピード,リズム,持
続力を強要」されていたわけです。

そして,動けなくなると虫けらのように処分され
ていました。

人間の出来た指揮官に恵まれた場合は,それなり
に丁重に扱われたこともあったらしいですが,
大抵は,動けなくなると処刑でした。

人権などあったものではありません。
しかし,当時と現代とで大きく違うのは,食糧事情
があまりにも悪かったということですね。

そして,ブルトーザーもクレーンもありませんで
した。

人間がブルトーザーやクレーンの役割を担い,農
地を開墾し,水害などの危険から身を守らなけれ
ばなりませんでした。

当時の人が奴隷に対してどのような感情を持って
いたのか?

当時の人の人権に対する考え方や価値観がどのよ
うなものであったのか?

本当のところは,よくわかりませんが,人権よりも
飢餓や災害の危機を回避することが,全てに優先
したのではないかと思います。

明治時代の女工哀史に代表されるように,女工
結核に罹り,10年も働くことは出来ませんでした。

しかし,女工という働き口があったことによって,
間引きや餓死が減ったという事実があるようです。

特に女性は間引きの対象になりやすかったらしい
のです。

皮肉な事実なのかも知れませんが,結核で命を落
とした女工は,結核に罹る以前に,間引きや餓死で
命を落とす可能性が高かったということです。

女工にとって,餓死と結核のどちらが幸せだった
のか複雑なところですが,少しでも長く生きると
いう意味では,女工になる方が幸せだったのだろ
うと思います。

実際に結核を患わずに仕事を全うした女工は,当
時としては,恵まれた暮らしをしたようです。

とはいえ,今日では少なくとも餓死する可能性は
ほとんどなく,むしろ肥満が原因で命を落とす時
代です。

しかも,多くの肉体労働が機械に置き換わりました。
ところが,時代の進歩に仕事の仕方や価値観が追
いついていないような場面に遭遇します。

人が,ブルトーザーやクレーンの代わりをやらざ
るを得なかった時代の仕事ぶりから抜けきること
は,思ったほど簡単ではないようです。

「自らのものではないスピード,リズム,持続力を
強要」するブラック企業があとを絶ちません。

ブラック企業として槍玉にあがった企業がありま
すが,創業者や一代で財をなす人は,たいていブ
ラック企業的な長時間労働をしてきた人です。

定時に帰って,土日はしっかり休み,お盆と正月
は実家に帰るようなことをしていたら,宝くじに
当たるか,稀有な才能がない限り,財をなすこと
はムリだと思います。

休日返上で,長時間労働あたり前の世界でないと
ダメで残業もせずに成果をあげるなんて,詐欺か
まやかしだというのは,ある程度当たっていると
と思います。

実際に,ビル・ゲイツの起業物語を読むと,不眠
不休で働いています。

ビル・ゲイツは,残業せずにサッサと帰り,効率
よく仕事をしたから成果をあげたわけではないの
です。

ブラック企業といわれても,幹部の人間は,ピン
と来ないのかも知れません。オレは,常にこれだ
けやってきたんだと開き直るかも知れません。

しかし,同じ長時間労働でも,「自らのものではな
いスピード,リズム,持続力を強要」されるのが従業
員です。

自らの野心のために率先して長時間労働を買って
出たものは,「自らのスピード,リズム,持続力を
強要したもの」ですから,休日返上でも,疲労
は少ないはずです。

しかし,世の中の人がみな,野心のために率先し
て仕事をするわけではなく,そのような働きに耐
えられるわけでもないのです。

また,奴隷時代のように,要求した仕事が出来な
ければ,処刑するか餓死させることが許された時
代でもありません。

もちろん,ゼロの状態から,何かを為すには,
今も昔も馬車馬のように働く人を必要とすることに
変わりないと思います。

いわゆる昔ながらのモーレツ社員が全く過去のも
のになったわけではない筈です。

しかし,全員に要求するのは,やはり間違ってい
ます。

自らの野心のための長時間労働とごく普通の平凡な
人間の長時間労働は,本質的に異なることを意外
とオーナー社長は気がついていないことが多い
かも知れません。

しかも,奴隷時代のような馬車馬のような働きでは
なく,その人の強みや創造性によって成果をあ
げる時代になったことも忘れてはいけません。

「自らのものではないスピード,リズム,持続力を
強要」することは,社会的責任として許されない
というだけでなく,肝心の業績も働くひとの創造
性が失われて,命取りになる可能性があるという
ことですね。

さて,あなたの職場はどうでしょうか?
「自らのものではないスピード,リズム,持続力を
強要」されていますか?

それとも,ある程度の裁量が許されているでしょ
うか?

長時間労働の全てが悪いというわけではないと
思います。

財を成した人は,詐欺やまやかしでなければ,
みな長時間労働をした人であることは,評伝を
読めばわかることです。

問題は,長時間労働の質がどうだったかという
ことですね。

人間が披露する要因を探り,要求している仕事
に無理がないかを見極める。

それが,ブラック企業ホワイト企業の差では
ないでしょうか?

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