不採算事業のテコ入れは何回まで許されるのか?

「一度で成功しなければ,一度だけやり直せ。
そして次は他のことをせよ」(創造する経営者P76)

不採算事業のテコ入れは,何回まで許されるの
でしょうか?

ドラッカーの答えは一回までということになり
ます。

しかし,これが意外と難しいのです。
テコ入れしないと,すべてパーになるとわかると
次から次へと投資するという負のスパイラルに
陥りがちです。

ある事業に社運をかけて10億円投資しましたが,
期待したような結果が出ておらず,1億円追加投
資してテコ入れしましたが,もう一つだったとし
ます。

このまま追加投資をしなければ,事業は失敗し,
撤退費用に1億円かかりますが,更に2億円追加
投資をすれば,20%の確率で成功するという
市場調査の結果が出ています。

金融機関は,2億円の追加投資の支援をするとの
確約を得ているとします。

この事例ですと,心理学の実験でも,また実際の
事例でも,ほとんどの場合,2億円の追加投資を
選択します。

果たして,これは合理的な判断でしょうか?
もちろん,やってみなければ,わかりません。

ただ,確率論でいうと追加投資をしないという
のが正解です。

2億円追加投資しても,80%の確率で失敗する
ので,期待値は,2億円×80%=1.6億円の損失

追加投資しないと失敗しますが,撤退費用は1億
円ですので,両者と比較すると,1億円の損失の
方を選択した方が合理的な判断ということにな
ります。

会計的には,最初に投資した10億と追加投資の1
億円はサンクコストで無視し,2億円の追加投資
の成功確率と徹底費用を天秤にかけて判断すべき
なのです。

この判断に対して,わずかな成功確率であっても,
追加投資に成功したら,これまで投資をしてきた
10億円と1億円を回収できたのに,最初から諦
めてしまったら,元の子もないではないかという
反論が出るかも知れません。

もちろん投資した金額の回収を諦めろといってい
るのではありません。
なんからの形で回収しなければなりません。

しかし,回収の方法は,成功確率の低いものに追
加投資するのでは,成功確率の高い他の投資によ
って回収すべきであるというのが,会計の答えな
のです。

ところが,追加投資するより,素直に撤退した方
が有利とわかっていても,昨日の均衡の回復を
優先し,勝ち目のない戦いにのめり込んでしまう
ものです。

それだけ,廃棄というのは難しいのです。
責任者のクビが飛ぶというサラリーマン社会なら
ではの理屈もありますが,心理的にも抵抗を覚え
てしまうように思います。

もしかしたら,子育ての論理と相関関係があるの
かも知れません。

手塩にかけて育てた子供を他の子供より将来性が
ないわかっていても見放すことなく,お金をつぎ
込みます。

経済的合理性でいうのであれば,将来有望な血の
つながっていない子供を養子にとって育てた方が
見返りが多いかもしれないのに,我々は,通常そ
のような選択肢をとることはありません。

自分の遺伝子を将来に残すという我々の本能に反
するわけですから,当然のことです。

社運をかけた事業に見切りをつけることが難しい
のも,自分の事業があたかも自分の子供のように
思えてしまい,子育ての論理が働いて廃棄するこ
とが,受け入れがたくなってしまうようです。

しかし,我々は子育てをしているのではありません
し,事業と子育ては別個のものです。

とはいえ,手塩にかけたものを手放すことが人間
の本能に反しているので難しくしているわけです
が,難しいからこそ,廃棄という決断をすること
が出来れば,それ自体が差別化の要因となります。

さて,あなたは手塩にかけて育てたものを廃棄出
来るでしょうか?
やはり,心理的に受け入れがたいですか?

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